money-mania’s blog

アメリカの金融事情をレポートします

格差や偏見の温床!?就職や保険料に影響するアメリカのクレジットスコアとは?

 

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アメリカでは「クレジットスコア」というシステムが導入され、社会問題になっています。最近では日本でも「クレジットスコア」という名前を見聞きしますが、アメリカのそれとはまったく異なるものです。

 

アメリカではクレジットスコアが保険や結婚、就職に影響します。しかも借金などがない健全な経済状態であっても、クレジットカードを利用してないと低い評価がついてしまうのです。

 

今後、日本にも導入されるかもしれない、この「クレジットスコア」。どのようなシステムで、どのような弊害があるのか知っておきましょう。

 

 

 

アメリカの「クレジットスコア」とは?

アメリカで導入されている「クレジットスコア」は、クレジットの利用状況を点数化したものです。「信用偏差値」とも言われており、クレジットカードやローンを申し込む時だけでなく、あらゆる場面で使われています。今や全米規模の格付け指標と言ってもいいでしょう。導入は20年以上前で、FACT法という専門の法律もあります。

 

なぜ、このようなシステムが導入されたかというと、アメリカは多民族国家で、様々な人種が一つの国で生活しています。けれども、その人物を評価する際に、根底に人種に対する偏見や先入観があると正しく判断できません。そのため、収入の大小やクレジットカードにおける信用を数値化したクレジットスコアを使って、人物を正しく評価する必要があったのです。

 クレジットスコアの概要

クレジットスコアの採点システムにはフェア・アイザック社が開発した「FICOスコア」が使われており、エクィファクス、エクスペリアン、トランスユニオンという3つの信用機関が独占的に活用しています。

下は300点から、上は850点までの間で評価され、680点から700点が平均値となります。750点以上あれば優良なクレジットカード利用者と見なされますが、逆に660点以下だと信用力が劣る人と評価されます。あくまでもクレジットカードの利用状況で採点されるので、十分な収入があって、借金もなく、預貯金が多い人でもクレジットカードを利用していなければ、点数は低くなるのです。

 

クレジットスコアの採点方法

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 FICOのクレジットスコアは、大きく分けて5つの項目で採点されます。また、その中でも評価に大きな影響を与える項目があるのです。

 

Payment History(クレジットカードの使用履歴)

評価全体の35%を占めるほど重要な項目です。所有しているクレジットカードの返済状況を見ます。期限までに返済しているのは「良い」というよりも、「当然」という評価です。むしろ延滞すると点数は大きく下がります

 

日本では期限までに返済するのが当然という風潮がありますが、アメリカでは延滞するケースが多く、多重債務や差し押さえといった採点要素もあるくらいなのです。一度この項目で点数を下げてしまうと、挽回するのが難しくなります。

 

Amount You Owe(限度額に対する借り入れ残高の割合)

 Payment Historyの次に重視される項目で、全体の30%を占めます。これは所有するクレジットカードすべての限度額に対して、どれくらいの割合で借り入れ残高があるのかを見ます。望ましい基準は20%程度とされています。

 

ここで難しいのは、1枚のクレジットカードしか持っていないと、必然的に割合は高くなり、スコアは低くなってしまいます。そのため、複数のクレジットカードを保有することで限度額が上がり、借り入れ残高の比率が下がります。

 

では使わなければ良いのでは?と日本の感覚では思いがちですが、0%というのも却ってスコアが下がってしまいます。あくまでも持っている以上、クレジットカードは使っていなければいけないのです。

 

逆に多くのカードを持っていれば利用割合を低くできて、スコアを高くできるかというと、そうでもありません。一人が持つべきカードの目安は3枚とされ、あまり多く保有し過ぎてもスコアが下がってしまうのです。

 

Length of Credit Card History(カードの使用歴の長さ)

 クレジットカードを何年使っているかを見る項目です。評価の15%を占めます。最も長く保有しているクレジットカードの年数や、複数枚あるカードの平均保有歴を見ます。長ければ長いほど点数は高くなるのですが、ただ保有しているだけではダメで、使っていることが前提となります。

 

Types of Credit You Have(どんな借り入れをしているか)

 どこのクレジット会社から借り入れてるか、どんな金融商品を利用しているか見ます。評価に占める割合は全体の10%とそんなに大きくありませんが、スコアを上げるのが難しい項目でもあります。

 

ここで見られる借り入れの方法はクレジットカードの利用に限らず、各種ローンの利用や支払方法なども含まれます。例えば車はカーローンを利用、住宅は住宅ローンを利用しているなどです。クレジットカードもリボルビング払いができるのであれば、それを利用しないと点数が下がるという厄介なところもあります。また、優秀な業者から借りるとスコアが上がるのです。

 

New Credit Open(新規申込とそれに伴うクレジットスコアの参照)

 そして残り10%を占めるのが、新規の借り入れ申込状況です。アメリカでは新規にクレジットカードを作ろうとすると、各カード会社が信用機関に申込者の情報をリクエストします。そのリクエストが1回あるだけでもクレジットスコアは下がってしまうのです。

 

また信用機関へのリクエストは何もクレジットカードの申込だけではありません。例えば車やDVDのレンタルでもリクエストされる場合があります。そのため、安易にリクエストされるような行動を起こさないことが重要です。

 

日本から移住した場合

 もしアメリカに移住して、日本のマイナンバーに相当する年金番号を取得したら、半年後からクレジットスコアの採点が始まります。最初の点数は600点です。これはあくまでもアメリカで現地通貨であるドルを使っての決済が対象になるので、日本など前に住んでいた国でのクレジットカード履歴は参照されません

 

このようにクレジットスコアの仕組みはとても複雑です。アメリカではスコアを上げるためのマニュアル本も多数発売されているほどです。複数枚のクレジットカードやローンを長きにわたってバランス良く利用し、必要以上に新規の申込をせず、支払期限を守っていればスコアは高くなると考えて良いでしょう。

 

クレジットスコアの弊害

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 クレジットスコアはアメリカで様々な弊害を引き起こし、社会問題になっています。一番の大きな問題は、クレジットスコアによって格差が生じることです。

 

例えば、750点以上の優良なスコアの人と、660点以下の信用力が劣る人とでは、クレジットカードやローンにおいて、大きな金利差があります。金融機関によっては、スコアの悪い人は最初から相手にしてくれないでしょう。そうなるとスコアの悪い人は不利な条件でしかお金を借りられなくなり、ますますスコアが下がってしまうのです。

 影響範囲が広い

困ったことに、アメリカではこのクレジットスコアがお金の貸し借りだけでなく、保険や携帯電話の契約、就職や住居選び、さらには結婚などにおいても大きく影響します。

 

保険なら、優良スコアの人が標準の3分の1の保険料で済むのに対し、スコアの悪い人は1.5倍です。携帯電話はスコアごとにプランが用意され、悪い人は条件が不利な上にさらにデポジット(保証金)を支払わなければいけません。

 

就職においては、クレジットスコアをチェックされ、悪い人は「無責任」「借金で手一杯な人」とみなされて不採用になってしまうでしょう。部屋を借りるのもスコアが悪い人は高い家賃を取られたり、そもそも借りられないかもしれません。結婚を申し込んだら相手や相手の親からクレジットスコアを聞かれた、という笑えない話もあります。

 

結局、人種による偏見をなくすために作られた制度のはずが、却って格差社会を作る要因になってしまったのです。クレジットスコアは一度下がってしまうと、再び上げるには大変な時間と労力を要します。そのため、信用できない人のレッテルを貼られたら、なかなか這い上がって来れないのです。

スコアを上げるために利用

また、クレジットスコアを意識するあまり、半ば強制的にクレジットカードを使うことになるので、お金に対する管理能力が十分でないと多重債務を招く危険性があります。現にアメリカでは毎年100万人ほどの自己破産者がいるほどです。

 根強いスコア判断

最近では、学生などクレジットスコアが無い人の評価をtwitterFacebookなどのつながりから判断する信用機関も増えています。例えば、つながっている友達の中にクレジットスコアの低い人がいると、本人も同類とみなされ評価が下がるといった具合です。それくらいアメリカではクレジットスコアが深く根付いているのです。

 

日本のクレジットスコア

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近年、日本でも「クレジットスコア」という名称を見聞きするようになりました。けれどもアメリカのクレジットスコアとはまったくの別物です。

 

日本のクレジットスコアは、新規にクレジットカードやローンなどの、借り入れを申し込んだ時の審査に使われます。まず、年齢や職業、年収や勤め先、持ち家の有無など様々な要素を点数化します。さらに他社の借り入れ状況や金融事故の有無などを加味して、最終的な点数が基準値より下であれば、無条件で撥ねられるのです。

スコアの独自性

ただし点数や評価基準は統一されておらず、各金融機関で独自のシステムを採用しています。そのため、カードローンを申し込んだ時に銀行では審査に落ちたけど、消費者金融では通った、ということが起きるのです。

 

カードローンの審査について職業や雇用形態がどのように影響するか、また求められる書類などについては下記のサイトが参考になります。

 

※ このサイトの下記のページが審査について詳しいです。カードローンの審査 虎の巻

 

 

 

クレジットスコアの導入は、個々人をランク付けするよりは、審査業務を簡略化することに重点が置かれています。特に「即審査OK」とか「30分で審査します」と謳っているところは、クレジットスコアによる自動的な審査を行っているのです。

 

日本ではJICC(日本信用情報機構)やが主な信用情報機関で、クレジットヒストリーや携帯電話の残債や支払情報が集約されるようになっています。

引用元:株式会社日本信用情報機構

引用元:割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関 CREDIT INFORMATION CENTER

各金融機関は借り入れの申込があった時に、この信用情報を参照します。もし過去に金融事故を起こしていたら即NGですし、他社での借り入れが多いのも撥ねられてしまいます。このような悪い情報は5~7年ほど残るようになっていて、それゆえに巷では「ブラックリスト」と呼ばれているのです。

 共通点

アメリカでは、クレジットカードを持っていないとクレジットスコアが低くなりますが、それは日本も同じで、住宅ローンを申し込んだ人が過去にクレジットカードの利用歴が無いと、信用度を測る情報がないため、他に問題が無くても審査に通らないことがあるのです。この場合、クレジットカードを作って、1年ほど利用実績を重ねれば審査に通りやすくなるでしょう。

信用情報の悪用に注意

日本の信用情報機関は、多重債務が社会問題になって、2010年に貸金業法が整備されて総量規制が導入された辺りから、情報が集約されるようになり、今では億単位の信用情報を持っていると言われています。基本的に加盟会社や金融機関、本人しかその情報は参照できませんが、利用規定の範囲内で悪用されることもあります。

 

信用情報には現在の借り入れ状況が含まれています。特に顧客を増やしたい中小の金融機関が、「借り入れが多い人はもっとお金を必要としているだろう」という思惑で案内を送りつけて、さらなる借り入れを勧め多重債務に陥らせてしまうという問題も発生しているのです。

 

よく、借金で首が回らなくなっている人ほど、消費者金融のダイレクトメールが送られてくるのは、そういった背景があるのです。

 

 

 

クレジットスコアのこれから

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 アメリカのオバマ大統領は、2008年の「年次改革要望書」において、日本でもアメリカのクレジットスコアを導入するよう要望を盛り込みました。この「年次改革要望書」は、過去に郵政民営化も盛り込まれたことがあったので、導入の可能性は十分に考えられるでしょう。アメリカには、共通のクレジットスコアを利用させることで、外資系のクレジット会社が参入しやすい環境を作ろうという思惑があるのです。

 

ただし、日本は個人情報の取り扱いについて条例で保護されており、国民も無断で個人情報が目的外で使われることに強い拒絶反応を示しています。そのため、お金の貸し借りだけでなく、あらゆる場面において使われるクレジットスコアの導入は阻まれる可能性が高いでしょう。

 

けれども、個人情報保護改正案が可決され、2016年1月から企業が個人を特定しない形で自由にデータを活用できるようになりました。もちろん、企業側は利用目的を明らかにし、データを提供する側は匿名で情報を提供する、というルールはありますが、今後、利用できるデータが個人を特定できる範囲まで広がる可能性は十分に考えられるでしょう。

 

折しも、同じ頃からマイナンバー制度が本格的に導入されます。これは適切な税の徴収と社会保障の提供を目的とした制度ですが、やがてクレジットスコアの代わりを果たすのではないか、という見方もあります。

 

既にクレジットスコアの採点基準となる履歴や借り入れ残高、申し込み状況といった情報は、信用機関に集約されています。そのため、日本またはアメリカがその気になればアメリカ版クレジットスコアの導入はそんなに難しいことではないでしょう

さいごに

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日本のクレジットスコアは、あくまでも新規の貸し付けの可否を判断する基準に過ぎません。個人の不利益は「お金を借りられない」ことに限定されます。けれども、アメリカのクレジットスコアは人々を富裕層と貧困層に明確に区別し、格差を生み出す原因となっています。貧困層になれば様々な不利益を被る破目になるでしょう。

 

確かにクレジットカードで買い物することは信用取引の一種です。カード会社は会員を信用した上で、クレジットカードの買い物を認めているのです。クレジットカードはカード会社からの貸与物に過ぎません。個人情報の有り方が変わりつつある今、もう一度クレジットカードを使う意味を考え直すべきなのかもしれません

 

少なくとも、今後アメリカのクレジットスコアが導入された場合は、ただ黙って受け入れるのではなく、その性質や導入の背景を理解した上で何らかのアクションは起こすべきでしょう。